硝子戸

毎日の中で感じたことや興味を持ったことなどを書いていきます。

服飾文化講座「イヴ=サンローラン」①

博物館で定期的に行われている、服飾文化講座に行って来た。隔月で毎回様々なデザイナーを取り上げて専門家が解説してくれる上、館の所蔵作品も間近に見せてもらえるという貴重な催し物だ。今回のテーマはイヴ=サンローラン。

 

実はあまり親しみのなかったデザイナーだったサンローラン

大昔から続くとても有名なブランドだけど、世代なども関係あるのか、自分的には今まであまりピンとは来ないお方だった。自分が20代の頃、雑誌で何度も特集を組まれて話題になっていた老舗ブランドは断然シャネルやグッチ、エルメス、もしくはジョン=ガリアーノにバトンタッチしたばかりのクリスチャンディオールといった所。イヴ=サンローラン氏は当時もまだ存命で、現役デザイナーとして最晩年の仕事に打ち込まれていた訳だけれど、20代の自分にとってのリアルな興味としてはまぁ化粧品くらい。

 

ただ、ここ数年はバッグや財布なんかの小物を30代以上向けの雑誌ではよく見かけるし、ファッションピープルの「これから10年先も着ていたいアイテム」の中にトレンチコートが取り上げられたりしてて、最近確実に巻き返しを図っているなぁ、と思う。アラフォーの自分にとっても、魅力的な商品が多いと感じる。

 

帝王と皇帝の不思議な縁

そんなイヴ=サンローラン氏のマニアックなお話を聞きに行き、今回かなり親近感や興味がわいた。彼が18歳でクリスチャン=ディオール本人に見初められてアトリエに入社し、3年後、急死したディオール志をついでたったの21歳でデザイナーになったのは有名なお話。

 

見初められるきっかけとなった国際羊毛事務局主催のコンクール、ドレス部門で彼は見事優勝をしている訳だけど、実は同年にこのコンクールのコート部門で優勝しているのが、学校でも同級生だったというカール=ラガーフェルドだった。後にモードの「帝王」と呼ばれたサンローランと、「皇帝」と呼ばれたラガーフェルド。まさにスタートラインの時点から、もう宿命的なライバル、強い縁のもとパリで出会っていた二人ということになるだろう。

 

同性愛者であることや、多産系の作家であること、デザイナーとしての息の長さなど、二人には共通点も多い。また、ラガーフェルドがシャネルのメゾンを長年率い、その精神を表現し続けている一方で、サンローランは若い頃、存命中のガブリエル=シャネル本人から孫のようにかわいがられていたという(逆に同じ60年代の綺羅星、ピエール=カルダンなどは非常に彼女から嫌われていたという。理由はちょっと不明。)。二人とも、違う形ではあるけれどもシャネルという存在から愛された男性たちでもあったと言えるかもしれない。

 

ただし、ファッションジャーナリストの故・大内順子さんは二人を「サンローランは弱い天才」「ラガーフェルドは強い天才」と評している(「大内順子のハッピー・セオリー」)。仕事のプレッシャーなどでしばしばドラッグに手を出さなければならず、母親やパートナーであったピエール=ベルジェらの献身的な支えでようやく仕事が成り立っていたサンローラン。自らの強靭な意思で自身も仕事も律し続けるドイツ人のラガーフェルド。共通点も多い一方で、二人のキャラクターはまったく反対だったのだ。

 

はてさて、なんだか今回はカール=ラガーフェルドとの比較ばかりに終わってしまったけれど、長くなりそうなので続きはまた次回に。今日はここまで!ごきげんよう