硝子戸

毎日の中で感じたことや興味を持ったことなどを書いていきます。

服飾文化講座11

 そして最後は、今まで紹介してきた1960年代におけるサンローランたちの活躍と、服装の民主化の流れの中で必然的に起こってきた出来事、既製服ライン「Saint Laurent Rive Gauche」の誕生についてです♫ まずは、オートクチュールで洋服を作るってどんな感じ?というところから始めます。

 

 そもそもオートクチュールっていくらぐらいするの?

オートクチュールに対して既製服が出てきたと言うけれど、そもそもオートクチュールの洋服というのは、一体いくらぐらいするものなのか、どれぐらい時間がかかるものなのか?それがわからないと両者の比較も難しい一方、一般市民の感覚ではちょっとわかりづらいものだと思う。

 

古い資料で恐縮だが、手元に1992年発行の「装苑アイ No.7 スーツ /文化学園ファッションセンター編集」という雑誌があり、そこに宮内彩さん(ファッションジャーナリスト、大内順子氏の娘さんに当たる方)が「自腹を切って」ディオールでスーツをオーダしてみたという、とても勇敢な企画が載っていたので紹介してみたい。

 

順序としたら、まずはショウを見学し、自分の気に入った作品を選ぶ。その際、自分の着やすいように多少デザインを変更しても可。決まったら、次にシーチングという綿の試作用生地で、自分の体に合わせた型を(写真 真ん中)を作ってもらい、さらにもう一度店に足を運び、今度は実際の生地でまた同じことを繰り返す(要は仮縫いを2回行う)。この時は8月のヴァカンスが1ヶ月挟まっていたということもあり、出来上がって来たのは注文から2ヶ月後。お値段は25年前の相場で約220万円だったそう。

 

顧客と言われる人たちは、このレベルの品物を1シーズンにだいたい10点ほど注文するとか。4、5点はスーツで、昼間のドレスが1点。2、3点のカクテルドレスに、1、2点はイヴニングといった感じだそう。まぁだいたい、1シーズンの洋服代に数千万円がかけられる人々、ということになる。ちなみにこのクラスのお客になると、自分サイズの人台が店に置いてもらえるため、自分が仮縫いに行く必要もない。東京や香港に住みながら、動画でショウをチェックした後、メールやファクシミリで注文することも可能というわけ。

 

f:id:mikadesign:20180121004758j:plain

 

地球上の全女性  35億人中の2〜5,000人 ─ 選ばれし者たちの世界

もうちょっと最近の記事を見てみよう。

ウェブサイト、Style Caster.comによると、夜会などに着るドレスなどの制作にかかる時間は800時間以上。お値段は普段に着るようなアイテム(先述のようなスーツとか)で、やはり10,000ドルから。極端な例を挙げると、2004年の「スパイダーマン2」のプレミアに出席した歌手 Samantha Mumbaのダイヤがきらめく衣装はなんと約900万ドルともいわれ、基本的にお値段は青天井ということがわかる。まぁこれはコレクションで発表されたもの、というよりはこの一夜のための特注品だったと思われるが。

 

そしてランウェイの上を歩くこれらの衣装を実際に着られる女性は、世界経済の状況によって変化はあるものの、だいたい現在地球上に2,000人から5,000人いると言われている。途上国の発展によっては新しい富裕層が出現してきたりもするので、一概に減る一方とも言えないが、全人類約70億人の半分が女性だと考えても、35億分の5,000人…

 

いかに「選ばれし特別な女性たち」だけのための世界か、これでおわかりいただけると思う。

 

▼一夜の衣装に約9億5千万円ほど(2004年当時、だいたい1ドル106円程度と換算して)を投じたというSamantha Mumba。確かにこれは、スパイダーマンにぴったり。蜘蛛をイメージしたハンドアクセサリーにも注目!褐色の肌の上で、白いダイヤがより映えますね。でも実際、向こうの芸能人が公式の場で着るこういった衣装って全部自分持ちなのでしょうかね?よくわかんないんですけど。

http://digitalspyuk.cdnds.net/14/15/1024x2050/gallery_showbiz-amazing-spider-man-2-premiere-samantha-mumba-3.jpg

(出展:Digital Spy http://www.digitalspy.com/showbiz/fashion-and-beauty/feature/a564016/is-this-the-most-amazing-spider-man-premiere-dress-ever/

 

 

保存

保存